メインコンテンツへスキップ

インコネル718の高精度加工における温度管理の重要性

テイクパーツファクトリー技術部
技術解説 難削材 インコネル 温度管理

航空宇宙産業で需要が高まるインコネル718。その加工における温度管理のポイントと当社の対策について詳しく解説します。

航空宇宙産業において、インコネル718は耐熱性と強度の観点から欠かせない材料となっています。しかし、その優れた特性ゆえに、加工には高度な技術と経験が必要です。

インコネル718の特性と加工の課題

インコネル718は、ニッケル基超耐熱合金として以下の優れた特性を持ちます:

  • 高温強度: 700°C以上でも強度を維持
  • 耐食性: 酸化・腐食に対する高い抵抗力
  • 時効硬化: 熱処理による硬度調整が可能

しかし、これらの特性が加工時の課題となります:

1. 加工硬化の問題

インコネル718は加工時に急激に硬化する特性があります。切削熱や加工圧力により、表面硬度が大幅に上昇し、工具寿命の短縮や加工精度の低下を招きます。

2. 熱伝導率の低さ

一般的な鋼材と比較して熱伝導率が低いため、切削点に熱がこもりやすく、工具温度の上昇が深刻な問題となります。

3. 化学的親和性

工具材料との化学的親和性が高く、溶着や拡散摩耗が発生しやすい特性があります。

温度管理の重要性

切削温度が与える影響

温度範囲影響対策の必要性
200°C以下正常加工可能
200-400°C加工硬化開始要注意
400°C以上急激な硬化・工具損傷危険

当社の温度管理システム

1. リアルタイム温度監視

  • 赤外線温度計による非接触測定
  • 切削点温度の連続監視
  • 設定温度超過時の自動停止機能

2. 最適化された切削条件

推奨切削条件(インコネル718):
・切削速度:30-50 m/min
・送り量:0.1-0.2 mm/rev
・切込み量:0.5-1.0 mm
・クーラント圧力:70 bar以上

3. 専用工具の選定

  • CBN工具: 高硬度・高耐熱性
  • セラミック工具: 化学的安定性
  • 専用コーティング: AlCrN、TiAlNコーティング

実際の加工事例

事例1:航空機エンジン部品

仕様

  • 材質:インコネル718(AMS 5663)
  • 形状:複雑内径加工
  • 公差:±0.005mm
  • 数量:50個/月

課題と対策

  • 内径加工時の排熱困難 → 内部給油システム導入
  • 薄肉部の変形 → 低切削力加工条件の最適化
  • 工具寿命短縮 → CBN工具への変更

結果

  • 公差達成率:99.8%
  • 工具寿命:従来比3倍向上
  • サイクルタイム:15%短縮

まとめ

インコネル718の精密加工において、温度管理は品質と効率を左右する最重要要素です。当社では、以下の総合的なアプローチで高品質加工を実現しています:

  1. 予防的温度管理: リアルタイム監視による予防
  2. 最適加工条件: 材料特性に応じた条件設定
  3. 適切な工具選択: 用途別専用工具の活用
  4. 継続的改善: データ蓄積による条件最適化

技術相談のご案内

インコネル718や他の難削材の加工でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。図面を拝見し、最適な加工方法をご提案いたします。

対応可能な難削材

  • インコネル系(718/625/X-750)
  • ハステロイ系(C-276/B-3)
  • チタン合金(Ti-6Al-4V/純Ti)
  • 析出硬化系ステンレス(SUS630/17-4PH)

この記事をシェア

著者について

テイクパーツファクトリー技術部 - 精密加工技術のエキスパートとして、15年以上の実務経験を持つ。 特にインコネル・チタン合金等の難削材加工に精通し、 航空宇宙・医療機器分野での豊富な実績を有する。

技術的なご質問はありませんか?

この記事に関するご質問や、類似案件のご相談など、お気軽にお問い合わせください。

技術相談をする